彼の話に耳と心をかたむけよう
日本の男というのは、世界でも有数なくらい愛情表現がへたくそである。
だから、ヨーロッパあたりを旅行したことがある日本女性など、向こうの女性が羨ましくなったりする。
「あんなふうに熱烈に、言葉巧みに愛情表現をされたら、どんなに嬉しいかしらね。いつもウキウキして、どんどんきれいになっちゃう感じ」との感想も聞いた。
男性がへたなのは認めるが、女性はどうだろうか。
日本の女性たちは、世界に出しても恥ずかしくないくらい、愛情表現はうまいのだろうか。
「そんなこと言ったって、男性の方がこっちの愛情表現を嫌がるんだもの。人前で手をつないだり、腕をくんだりするだけで、恥ずかしいからやめてくれとか怒ったりするでしょうよ」
たしかにそれは恥ずかしい。
だが そんなに恥ずかしがられるというのは、結局、愛情表現があまり上手ではないからだとは言えないだろうか。
日本の男性にしても、女性から愛情表現をうけることが嫌いなわけではない。
ただ、なんだか欧米人の真似ごとのような、とってつけたようなポーズが苦手なのである。
シャイな日本の男に合った、もっと上手な愛情表現ならいくらでも受け入れてあげるのではないか。
心がやすらぐ彼女の一言
Bくんの恋人は、彼に向かって「どうしたの?」とか、「大丈夫?」ということを聞く。
ちょっと元気がないとき、あるいは待ち合わせの時間に遅れたときも、一番最初にその言葉を言う。
これが気の強い女性あたりだったら、「なに、やってんのよ」 とか、「いやあね、まったく」などと言うところである。
だが、彼女の口調はやさしく、まるで母親が子どもに問いかけるようだという。
「僕は決してマザコンというわけじゃないんです。それどころか、うちの母親は、がみがみタイプだったから、あんなふうなやさしい言葉をかけられたことはなかったですよ。それが、彼女のあの口癖を聞くたびに、ああ女性というのはこんなふうにやさしいのかと感激しちゃうほどです」
しかも、彼女の問いかけによって、Bくんは胸のうちの悩みとかをなんでも話したくなって、しかも話したあとはすっきりするのだという。
「どうしたの?」
「じつは、今日、 ちょっといやなことがあってさ・・・」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ・・・」
という感じで話が進む。
まさに、まれに見る聞き上手であるし、これも立派な愛情表現と言えるだろう。
ただし、これだとあまりにも心地よすぎて、女性に甘えきってしまうおそれもある。
それでもいいと思うのであれば、ぜひ試してみてください。
ふたりだけの時間だからこそ
女性は恋人と会ったとき、つのる思いがいろいろあるのもわかるし、これも愛情表現のひとつと言えなくもないだろう。
だが、あまりうまい表現法ではない。
せっかくの会話だというのに、単なる情報交換みたいになってしまうのでは、味もそっけもない。
会話のプロである落語家がもっとも大事にするのは「間」である。
これがよくないと、どんなにしゃべりがうまくても、会話は生きてこない。
このなにも言わない沈黙にこそ、さまざまな感情が凝縮しているのだ。
彼との話のあいだに、ふっと沈黙がはさまれる。
彼は一瞬、おや?と思うだろう。
そして、次の言葉に注意をかたむける。
あるいは、彼の話をじっくりと聞いてあげて、沈黙する。
それが白けた沈黙ではなく、安らぎのある沈黙。
会話の上手な人はみんな、これがうまい。
それと話し方がゆっくりしている。
機関銃のような話にやすらぎはなかなか生まれない。
こんな会話術も、恋人同士のあいだでは、立派な愛情表現として機能していくものである。
寄り添ったり、キスしたりすることだけが、愛情表現ではない。
相手の気分を楽にしてあげることも大事ではないだろうか。
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